麹町ラプソディ
丸の内サラリーマン(ブラック)が日常を五行で切り取るブログ。たまに小説も書きます。
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【小説】赤い屋根の家 12.赤い屋根の家
「結局ね、呪いなんてなかったんだよ」
 そう思わないかい、と芳樹は助手席の女性に微笑みかけた。女性はただ静かに薄い笑みを浮かべていた。
「そうだろう、僕もそう思うんだ」
 夜中に行こうと思っていたけれど、ちょうどいいのでこのまま寄って行こうと芳樹は思った。この時間帯なら、それほど車通りがあるわけではない。芳樹は国道の途中で車のライトを消し、赤い家の前に車を止めた。彼女を大事そうに抱えると、地下室に運んだ。時間が経つと硬化してしまうから、早い方がいいだろう。関節を外してやらないと。


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【小説】 赤い屋根の家 11.北条のケース
「先輩、俺がいくら暇だからって、この歳でこんな夜更けに、こんな張り込みみたいな真似しなくてもいいんじゃないですかね?」
 西が非難の声を上げてきた。
「張り込みみたいな真似、じゃなくて、純然たる張り込みだ。天然パーマの西君は張り込みは嫌いかな?」
 北条は運転席で腕を組んだまま言った。筋肉質の巨漢から出る低音の効いた声は、まるで真実を述べているように車内に響く。
「天パは余計です。それにしても、本当に昔から好きですねぇ。俺は暇だからいいですけど、この前の強盗放火犯グループの拠点に乗り込んだときは、どうなることかと思いましたよ」
「最近の若者があんなに簡単にキレるとはな。さとり世代じゃなかったのか」
「頭数が揃うと、気が大きくなるもんですよ。今も昔も」
「っと、アレだな」
 軽口を叩いているところに、一台の車が入ってきた。車はライトをつけておらず、池に影だけを見せる主のように、夏のセミの声に紛れて黒い輪郭が砂利を噛む音と共に滑り混んできた。

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【小説】 赤い屋根の家 10.佐脇のケース
 佐脇勇次(さわきゆうじ)は、鏡の前に座していた。
「これが、その鏡か」

 四十を過ぎるまで仕事一筋で趣味らしい趣味もなかった佐脇は、上司の失敗の責任を転嫁されて閑職に左遷された結果、暇を持て余していた。真面目一辺倒で生きてきたため、政治的な駆け引きなどできようもなく、妻に罵られようともそれも運命と受け入れるより他なかった。小学生の息子は、友達と遊ぶのに忙しくて自分のことなど見向きもしてくれない。

 仕方なく暇つぶしにと、それまで見向きもしていなかった家の蔵の片付けをしていたところ、いかにも古い木箱の中から、これまたいかにも古い文書が出てきた。生真面目で凝り性な性格の佐脇は、見つかった文書の解読に手をつけた。大学の専攻がこんなところで役に立つとは思わなかった。妻はそんなことより稼ぎを、と言っていたが、佐脇が聞く耳を持たず古文書にのめり込んでいるのを見るうちに放っておくようになった。
 どうしてもわからないところは飛ばしながら読み進めていくと、どうやら平安時代あたりの陰陽師の手により書かれたものであり、ある女性からの頼みにより鏡に呪いをかけたことについての後悔が書き連ねられていた。

 『自分が密かに思いを抱いていた后妃が、天皇の子を授からないばかりに罵られ、他の若い女が子を授かっていくことに耐えられないと言って、さめざめと泣かれてしまった。女やその子ばかりでなく、犬よりも下の扱いを受けるのだ、と。その結果、あのような鏡を生んでしまった。元々はそこまで呪いは強くないはずだったが、彼女の血を受けて(判読不能)。とんでもないことをしてしまった。あの女は物の怪の類かも知れぬ。あの鏡を見たものは(判読不能)、解呪はとてもできぬと判断し、つてを辿って慶国寺に預けることとした。』

 せっかくここまで調べたのだからと、佐脇は慶国寺を訪ねてみることにした。

◇◆◇

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【小説】赤い屋根の家 9.秋豆のケース
 秋豆景子(あきずけいこ)は、夏の戸口に立っていた。
「うーん、申し訳ないんだけど、心当たりはないですねぇ」
 連日の猛暑の中、海山という若い警察官が聞き込みに来ていた。先日の銀行強盗に関連する件である。当初は銀行強盗との報道で、ニュースの地方枠として小さく取り上げられていたが、その潜伏先であった建物近くの池から大量の人形が出てきたことから、昼のワイドショーの格好のネタとなっていた。専業主婦である秋豆は、毎日流れてくる下衆な報道にうんざりしていた。子どもも小学校に上がったことだし、そろそろ少しくらい働きに出るのもいいかもしれない。
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ベジタリアン。
「肉は可哀想だから食べないの」と彼女は行った


言葉を持たないレタスを咀嚼し


シルクのレースがついた可愛らしい服がよく似合っていた


彼女の足元には蟻が一筋の群をなし


手にしたソフトクリームはコチニール色素で彩られていた