麹町ラプソディ
丸の内サラリーマン(ブラック)が日常を五行で切り取るブログ。たまに小説も書きます。
プロフィール

サトイチ

Author:サトイチ
子どものまま大人になった、しがないリーマンのつぶやきです。
当ブログはリンクフリーですので、気軽にペタペタしてください。相互リンクの場合は是非コメント等に一言頂けると助かります。
あと、甘党です。

最近、小説ばっかり書いてますが、そのうち媒体を切り分けることも考えています。ただ、今はとにかく書くことが大事だということで、ひとまずこのまま混合して進めて行きます。



最新記事



リンク

このブログをリンクに追加する



最新コメント



日本ブログ村



最新トラックバック



月別アーカイブ



カテゴリ



検索フォーム



RSSリンクの表示



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



QRコード

QR



7.「僕はカツ丼が食べたい」
「僕はカツ丼が食べたい」
 実際に言葉にしてみると、それはとても重要で重大なことのように思われた。丁寧に折り畳まれ、センスのいい海外の便箋に入れられた、秘密の手紙のような響きだ。
 そう、僕はカツ丼が食べたいのだ。何が悲しくて、パスタとサンドウィッチばかり食べて、ビールでナッツを流し込まなきゃならないんだ。何が完璧な絶望だ。冗談じゃない。

 今日も朝から雪が静かに降り注いでおり、暖かいはずの昼の光は厚い雲に遮られている。昼食後、僕の家に残ってコーヒーを飲んでいるのは夏と赤鼻だけだった。
「赤鼻さん、たまにはいい子にプレゼントくらいあってもいいんじゃないか?」と僕は尋ねた。
「それはサンタの仕事だ。俺のじゃない。もし仮に、ここにいい子がいたとしても、だ」
 互いのビジネスに踏み入らないのが、この街のルールだった。
「だいたい、カツ丼なんて学生課肉体労働者の食うもんだ。いい大人が食べるもんじゃない」と言って、赤鼻は鼻を鳴らした。

続きを読む

スポンサーサイト

テーマ:文学・小説 - ジャンル:小説・文学

6.「完璧なパスタなんて存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」
 いつも通り昼過ぎに散歩をしていると、老婆ではなくトナカイが向こうから来た。
「おお、新入りじゃないか」
 赤鼻は、鼻から勢い良く白い息を出し、吐ききれなかった分を口から出した。
「赤鼻さん、唾が飛んでますよ」
「冬だからな。唾も飛ぶさ。どこかの腐れロック野郎みたいに、頭が飛んでないだけマシだろう?」
 赤鼻は空に向かって鼻を鳴らした。


続きを読む

5.「イタリアは孤独を輸出している」
「おばあさん、今日もいい天気ですね」と僕は老婆に挨拶した。
 老婆は僕の目を見て、「行動を伴わない想像力は、何の意味も持たない」と言った。
「チャーリー・チャップリン」
 僕と老婆は互いに微笑み、すれ違った。
 

 僕は引き続きパスタとサンドウィッチを作り続けていた。
 どんなパスタやサンドウィッチを作るかは自由だったから、僕の気分でペペロンチーノだったりクリームパスタだったり、BLTサンドだったりを作った。決まっていたのは、パスタかサンドウィッチを作ること。それも10キログラムを毎日作り続けることだった。大きな鍋に何度もパスタを放ち、またはひたすらに食パンを重ねて切っていた。作り終えた料理は夏に預けることになっている。
 冷めたパスタはおいしくないと思うのだが、預けた料理がどのように保存され、どのように分配されているかは僕にはわからなかった。夏に預け、僕の視界から消えると、それは概念としての存在に過ぎなかった。どこかにあって、どこにもない、僕の冷めたパスタ。

続きを読む

テーマ:文学・小説 - ジャンル:小説・文学

4.「ロックなんてものは学生か肉体労働者の聴くもんだ」
「おはようございます、今日もいい天気ですね」と老婆は言った。
「ええ、本当に」と僕は言った。
「いい日はいくらでもあります。手に入れるのが難しいのは、いい人生です」
「アニー・ディラード」
 僕と老婆は互いに微笑み、すれ違った。
 

続きを読む

テーマ:文学・小説 - ジャンル:小説・文学

3.「あなたってタフね」
「ここは『世界の終わり』だ。いくつかある世界の終わりの一つだ。共通する点もあれば、異なる点もある。共通することは、街の中に入るには影を預けなければならず、そして冬が厳しいということだ。何か質問は?」
 門番は僕に尋ねた。5メートルほどの高さの門の前で、我々は立ったまま会話をしていた。昼を過ぎたあたりで陽は射していたものの、物悲しい風が吹いているせいで体温が徐々に奪われていくのを感じた。風が泣いているのだ。


続きを読む

テーマ:文学・小説 - ジャンル:小説・文学