麹町ラプソディ
丸の内サラリーマン(ブラック)が日常を五行で切り取るブログ。たまに小説も書きます。
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サトイチ

Author:サトイチ
子どものまま大人になった、しがないリーマンのつぶやきです。
当ブログはリンクフリーですので、気軽にペタペタしてください。相互リンクの場合は是非コメント等に一言頂けると助かります。
あと、甘党です。

最近、小説ばっかり書いてますが、そのうち媒体を切り分けることも考えています。ただ、今はとにかく書くことが大事だということで、ひとまずこのまま混合して進めて行きます。



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4.「ロックなんてものは学生か肉体労働者の聴くもんだ」
「おはようございます、今日もいい天気ですね」と老婆は言った。
「ええ、本当に」と僕は言った。
「いい日はいくらでもあります。手に入れるのが難しいのは、いい人生です」
「アニー・ディラード」
 僕と老婆は互いに微笑み、すれ違った。
 

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3.「あなたってタフね」
「ここは『世界の終わり』だ。いくつかある世界の終わりの一つだ。共通する点もあれば、異なる点もある。共通することは、街の中に入るには影を預けなければならず、そして冬が厳しいということだ。何か質問は?」
 門番は僕に尋ねた。5メートルほどの高さの門の前で、我々は立ったまま会話をしていた。昼を過ぎたあたりで陽は射していたものの、物悲しい風が吹いているせいで体温が徐々に奪われていくのを感じた。風が泣いているのだ。


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2.「君はパスタとサンドウィッチを作って欲しい」
朝起きると、僕は柔らかいベッドに包まれていた。
 そうだ、悪い夢だったんだ。そう思って寝直そうとしたが、布団の感触がいつもと違っていた。
 ホテルのパリッとしたシーツのように、どこかしっくりこないのだ。

 仕方なく上体を起こし目を開けると、まるで見覚えのない部屋だった。
 ベッドの右側は大きな窓に面し、淡いグリーンのカーテン越しに柔らかな陽光が揺れている。
 上体を起こしたまま正面を見ると、北欧風の木製のタンスがあった。家具は詳しくないが、ひと目で丁寧に作られた高級なものであることがわかる。正面から左に視界を移していくと、部屋の入り口のドアが見え、コートのかかった鹿の角があり、ベッドの左手には深く腰掛ける安楽椅子が二つあった。椅子の間にはちょうどチェスのボードが置けるくらいの丸いテーブルがあり、ガラス製の灰皿が備えてある。いずれもやはり高級そうだ。
 そして、これだけ趣味の良さそうな部屋に不釣り合いな、ブルーグレーの軍服に身を包んだ老人が一人、椅子に深く腰掛けてこちらを見ていた。胸元は勲章で埋め尽くされ、手にしたパイプからは紫煙が細く伸びている。


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1.「やれやれ、と僕は思った」
大学二年生の七月から、翌年の一月にかけて、僕はほとんどパスタのことだけを考えて生きていた。
 その間に二十歳の誕生日を迎えたが、その刻み目はとくに何の意味も持たなかった。

 もし仮に今の僕がその時の僕に会ったなら、それを止めるだろうか。いや、おそらく止めないだろう。なぜなら、鍋の中でグツグツと煮立つトマト・ソースだけが、熱湯の中で踊るパスタだけが、その時の唯一の僕の希望であったからだ。若者にとっては、希望を求めることがすなわち生きることなのだ。

 そんな風にして僕は、柔らかいベッドの上で、パスタを喉に詰まらせて死んだ。

 やれやれ、と僕は思った。